QUANTUM MOLECULAR INTELLIGENCE
環境に応答し揺らぐ電子状態を理解・予測・設計する
実験だけでは捉えきれない動的な電子状態応答を、量子化学計算・分子シミュレーション・機械学習・実験の連携によって明らかにし、予測と設計の原理へつなげます。
VISION
分子や材料の機能は、構造だけでなく、環境に応答して変化する電子状態によって生み出されます。理論化学研究室では、量子化学計算、分子シミュレーション、機械学習、実験データを結びつけ、電子状態・構造・環境・機能をつなぐ原理を明らかにします。得られた知見を未知の分子、材料、反応へ展開し、新しい予測と設計の原理を創出します。
PI MESSAGE →RESEARCH
電子状態の応答とゆらぎから、化学機能を理解する。
電子状態・分子間相互作用・分子構造は固定されたものではなく、溶媒、周囲の分子、温度、外場、同位体置換などに応答し、時間的・統計的に揺らぎます。私たちは、こうした応答とゆらぎを量子化学、分子シミュレーション、データ科学によって捉え、化学機能の理解・予測・設計につなげています。この共通の視点のもと、電子状態計算と分子シミュレーションにデータ科学を融合し、4つの研究軸を展開しています。
4つの研究軸
PEOPLE
メンバー
UNDERGRADUATE STUDENTS
学部4年生(B4)
PUBLICATIONS
研究業績
代表論文では4つの研究軸を象徴する成果を紹介します。最新論文を先に示し、過去の論文は年別に閲覧できます。
代表論文
最新論文・年別アーカイブ
2026発表・採択済み5報+査読中1報
低温ジボラン氷中で二架橋型ジボラニル(B₂H₅)ラジカルを実験的に同定し、その帰属を量子化学計算による構造・振動スペクトルの知見が支えた国際共同研究。
イミド化合物のラセミ化を促進する協同的プロトンリレー経路を、電子構造の観点から解明した。
電子状態インフォマティクスを用いて、アクチノイド/ランタノイド選択性を支配する配位子の電子的・構造的因子を特定した。
配位子が周囲の電子状態に及ぼす応答を指標として、QM/MM計算の量子領域を物理的根拠に基づき、一貫して決定する方法を提案した。
ハイパーゴリックイオン液体と過酸化水素の自己着火を支配する初期反応経路を、量子化学計算により明らかにした。
同位体置換が分子構造と軌道相互作用を変化させる機構を、核量子効果を含む電子状態計算から解析した。
20255
半経験的分子軌道計算から得られる電子状態記述子と機械学習を組み合わせ、多様な溶媒中の酸性度を予測する手法を構築した。
サリドマイド類縁体と重水素置換体を対象に、核量子効果が立体反転と電子状態に及ぼす影響を解析し、薬理作用や安全性評価に関わる同位体効果の可能性を示した。
核量子効果が核酸塩基対のプロトン移動障壁と電子状態を変化させ、生成物の存在比にも大きな影響を及ぼすことを明らかにした。
電子状態記述子と機械学習を用いて、有機エレクトロニクス材料の色調を精密に予測・設計する方法を示した。
電子状態に基づく分子設計により、エレクトロクロミック材料の色純度と酸化還元電位を両立する設計指針を示した。
20242
光環化によるエレクトロクロミック材料の劣化機構を量子化学的に解析し、劣化を抑制する分子設計指針を提案した。
ハイパーゴリックイオン液体のアニオン電子状態が、酸化剤との初期反応経路と反応性を左右する機構を整理した。
20235
COSMO-RS計算により、湿潤条件下でも高いCO₂選択性を示す二成分吸収液と、微量イオン種の役割を明らかにした。
計算データと機械学習を用いてCO₂吸収用イオン液体を設計し、候補物質の性能を実験的に検証した。
近赤外TADF分子に形成されるドナー–アクセプター架橋型分子内水素結合の構造と電子的役割を解析した。
分子間相互作用から化学反応までを計算化学で扱い、有機・無機・物理化学を横断的に学ぶ教育プログラムを提案した。
本質的に限りある実験データを計算化学と機械学習で補完し、機能性液体の物性理解と合理的設計につなげる研究を概説した。
20224
ホスホニウム系イオン液体へのCO₂および炭化水素の溶解性を評価し、ガス分離選択性を支配する要因を検討した。
TMAOおよびtert-ブチルアルコール水溶液を対象に、溶液構造に伴って揺らぐ溶質・溶媒の電子状態を解析した。
GIAO NMR計算とDP4/DP4+解析の信頼性を検証し、海洋マクロライド天然物の相対立体配置を帰属した。
機械学習と量子化学計算を組み合わせ、シバラクロット誘導体におけるシングレットフィッション材料の設計原理を探索した。
2021年以前70
2021 (4)
反転学習用動画、クラウド計算環境、遠隔会議システムを組み合わせ、実験・量子化学計算・データ科学を横断的に学ぶ物理化学実験科目を構築した。
柔軟なトリペプチド配位子が形成する異種金属環状構造を解析し、金属間の反強磁性的スピン結合を明らかにした。
励起状態での水素脱離を利用し、芳香族アルコール・アミン・チオールから添加剤なしで多様な光化学反応を誘起した。
分子間電荷移動三重項状態を利用し、赤色から近赤外域に発光する室温リン光分子の設計原理を示した。
2020 (2)
ジフェニルアセチレン骨格をもつ芳香族アミドオリゴマーを合成し、安定なヘリカル構造を形成する要因を解析した。
COSMO-RS計算により混合イオン液体のアニオン効果を系統的に評価し、CO₂吸収性能を向上させる設計指針を示した。
2019 (3)
EFP2-MD法を液体から超臨界流体まで適用し、拡散や動的物性を第一原理的に予測できる可能性を検証した。
COSMO-RS法により68,775種のイオン液体に対する15種類の気体のHenry定数を計算し、ガス分離材料探索のための第一原理データベースを構築するとともに、吸収能の予測にはイオンの幾何構造と電子状態の双方が重要であることを示した。
六員環シクロメタル化イリジウム錯体の構造と発光特性を、合成・結晶構造解析・量子化学計算から再検討した。
2018 (4)
EFP2-MD法を混合溶媒に適用し、過剰体積や過剰エンタルピーなどの非理想混合物性の再現性を検証した。
ピロール環を含む芳香族オリゴアミドの配座特性を解析し、分子内相互作用が折りたたみ構造に与える影響を示した。
モンモリロナイト粘土上に共吸着したキラル金属錯体間の立体選択的相互作用を、振動円二色性と計算から解明した。
交互にN-アルキル化した芳香族アミドオリゴマーを合成し、置換様式による配座制御の機構を解析した。
2017 (1)
Pt₁₂クラスターの高い酸素還元活性の電子的起源を明らかにし、サブナノ合金クラスターによる高活性触媒設計を提案した。
2016 (2)
EFP2-MD法をイオン液体へ適用し、分極や分子間相互作用を考慮した溶液構造解析の有効性を示した。
形状制御パラジウムナノ粒子における水素吸蔵速度の結晶面依存性を解析し、表面構造と反応性の関係を示した。
2015 (1)
FMO-MD法により水和ランタノイド三価イオンの溶媒和構造と動的挙動を解析した。
2014 (4)
ラジウム二価イオンの水和構造を量子化学的に解析し、他のアルカリ土類金属イオンとの違いを比較した。
白金(II)錯体の励起状態とリン光特性を相対論的DFT計算で解析し、配位子構造と発光特性の関係を示した。
FMO-MD法を用いて水和銅(II)イオンの配位構造と水分子交換を動的に解析した。
FMO-MDシミュレーションにより、ラジウム二価イオン周囲の水和数と動的水和構造を評価した。
2013 (1)
シスプラチンおよびトランスプラチンの電子遷移帰属において、スピン–軌道相互作用と溶媒効果が不可欠であることを示した。
2012 (3)
遷移金属錯体の生成エンタルピー計算について、化学的コアポテンシャルの精度と適用性を体系的に評価した。
FMO-MD法によりシスプラチンとトランスプラチンの水和構造を比較し、異性体間で異なる溶媒応答を明らかにした。
フルホイスラー合金薄膜の電子バンド構造を計算し、スピントロニクス材料としての電子的特性を評価した。
2011 (6)
4f電子を内殻に含めるモデルコアポテンシャルを三価ランタノイドへ展開し、効率的な電子状態計算を可能にした。
人工ジンクフィンガータンパク質によるDNA認識の変化を解析し、配列選択性を左右する物理化学的要因を示した。
cPA誘導体の立体異性体によるオートタキシン阻害活性を実験とQM/MM計算から比較し、2-carba-cPAが高い阻害活性を示す一方、そのキラリティーは阻害活性に大きく影響しないことを示した。
ヨウ素クラスターアニオンの安定構造、化学結合性、振動スペクトルをDFT計算により解析した。
ランタノイド一価イオンによるC–F結合活性化の反応経路と電子的駆動力を量子化学的に解析した。
金属アセチルアセトナート錯体のVCDスペクトルに対する非調和性と低励起状態の影響を明らかにした。
2010 (3)
FMO-MD法により水和亜鉛(II)イオンの配位構造と周囲の水分子の動的挙動を解析した。
希ガス元素を含む分子にモデルコアポテンシャルを適用し、構造・結合・分光特性の計算精度を評価した。
モデルコアポテンシャルを用いて三価希土類イオンの水和モデルを比較し、イオン半径と水和構造の関係を解析した。
2009 (5)
目的や計算環境に応じて複数の量子化学コードを適応的に組み合わせ、大規模複雑系の計算を一元的に実行する情報科学的基盤を検討した。
ランタノイド三ハロゲン化物の多参照電子状態を計算し、モデルコアポテンシャルの適用性を検証した。
典型元素向けの新しいモデルコアポテンシャルを較正し、原子・分子物性に対する再現精度を評価した。
第3遷移系列元素に対する改良型モデルコアポテンシャルを開発し、相対論効果を含む高効率計算を実現した。
基底状態と励起状態で双極子モーメントが反転する分子を探索し、光誘起電荷移動材料の設計可能性を示した。
2008 (7)
大規模複雑系の量子化学計算に必要な複数の計算コードと計算資源を適切に選択・統合するため、量子化学ソフトウェアの性能データベースを構築した。
大環状配位子と重アルカリ・アルカリ土類金属イオンの錯形成構造と結合性をDFT計算で比較した。
アニオン応答性ランタノイド錯体の配位構造と発光応答を、実験と理論計算を組み合わせて解明した。
水素結合で制御されたコバルト錯体の光誘起状態変換機構を、スピン–軌道CI計算から明らかにした。
第一遷移系列元素用のモデルコアポテンシャルを改良し、分子構造と電子状態の計算精度を向上させた。
第二遷移系列元素に対する改良型モデルコアポテンシャルを開発し、相対論的量子化学計算の効率化を図った。
新規相対論的モデルコアポテンシャルを用いてMn₂の複雑な低励起電子状態を解析した。
2007 (6)
第一遷移系列元素用に開発したspds型モデルコアポテンシャルを分子計算へ適用し、その性能を検証した。
ベンゼントリマーカチオンの構造と正電荷の非局在化をab initio計算により解析した。
重元素を含むホスホリル・チオホスホリルハライドの電子親和力を計算し、元素置換効果を明らかにした。
sブロック元素用モデルコアポテンシャルを改良し、原子・分子物性を効率よく再現する基盤を整備した。
水素結合と酸化還元状態を利用するコバルト錯体分子スイッチについて、電子・振動スペクトルと動作機構を予測した。
金・銀・銅クラスターの安定構造を相対論的モデルコアポテンシャルで解析し、金属種による構造差を比較した。
2006 (3)
FMO法をケイ素含有分子へ拡張し、重元素を含む大規模系の電子状態計算への適用性を示した。
銅錯体の光誘起平面–四面体構造変化とd⁹–d¹⁰電子状態変換の機構を量子化学的に解析した。
重金属原子を含む大規模分子系へFMO法を適用し、計算精度と大規模計算への実用性を検証した。
2005 (5)
モデルコアポテンシャル法に適した典型元素用のコンパクトな基底関数を開発し、精度と計算効率を両立した。
2,2′-ビイミダゾールと酸化還元活性配位子を組み合わせ、水素結合で制御される分子スイッチの可能性を示した。
量子化学計算を用いて、有機EL用亜鉛錯体が薄膜中と溶液中で異なる会合状態をとり、二量体または単量体として安定化される可能性を示した。
DFT計算により、有機EL用亜鉛錯体の単量体・二量体構造と電子状態を比較し、周囲の環境による会合状態の変化を解析した。
溶媒効果と置換基の立体障害が、有機EL用亜鉛錯体の単量体・二量体平衡と電子状態に及ぼす影響を量子化学的に解析した。
2004 (2)
一次元ニッケル錯体の水素結合構造を解析し、遷移金属中心が水素結合強度と電子状態に与える影響を示した。
光照射後も状態を保持できる分子スイッチを理論設計し、水素結合と金属錯体の電子状態変換を利用する原理を提案した。
2003 (2)
9-ヒドロキシフェナレノンとCO₂/H₂Oの錯形成がプロトントンネルポテンシャルに及ぼす影響を二次元ポテンシャル面から解析した。
Si(111)表面へのNa、Mg、Al吸着を分子軌道計算で比較し、金属種による結合様式と電子構造の違いを示した。
2002 (6)
ジェット冷却N-サリチリデンアニリンの励起状態分子内プロトン移動を分光実験と理論計算から解析した。
ジェット冷却錯体の分光測定と理論計算を組み合わせ、CO₂との相互作用がプロトントンネル運動に及ぼす影響を明らかにした。
p-アミノフェノールとCOまたはN₂の錯体について、分光測定と計算から水素結合型かvan der Waals型かを判定した。
p-アミノフェノール–水錯体の構造と分子間水素結合を、電子・赤外分光とDFT計算から決定した。
Si(111)表面と金属原子の相互作用を理論解析し、吸着構造と表面電子状態の関係を検討した。
9-ヒドロキシフェナレノン–CO₂錯体のプロトン移動ポテンシャルを計算し、錯形成によるトンネル挙動の変化を解析した。
その他 8
著書・分担執筆・解説を掲載しています。
NEWS
最新情報
主なメディア掲載 新聞・科学メディアでの紹介
研究成果を社会へ伝える
電子状態ゆらぎ、機能性液体、データ駆動型分子設計に関する研究は、学術論文に加えて科学メディアや主要報道機関でも紹介されています。
NETWORK & LINKS
研究ネットワーク・関連リンク
共同研究、研究プロジェクト、公開プログラム、学術コミュニティを通じて、理論化学を多様な研究分野へ展開しています。
共同研究者・関連機関 8
研究プロジェクト 23
現在進行中2
完了したもの21
公開プログラム・学術コミュニティ 9
公開プログラム
所属学会・学術コミュニティ
ALUMNI
卒業生・元メンバー
卒業生・元メンバー一覧を表示 77名(博士4名・修士10名・学士58名・元研究スタッフ5名)
JOIN US
学生・企業・共同研究者の皆さまへ
学部生・大学院生・博士研究員、企業・共同研究者の皆さまからのご連絡を歓迎します。量子化学やプログラミングの経験が十分でなくても、基礎から段階的に学べます。大学院進学、研究室見学、博士研究員、企業連携、共同研究に関するご相談も随時受け付けています。計算を実験後の説明にとどめず、まだ答えのない化学の問いを、次の実験につながる検証可能な仮説と実践的な設計指針へ共に変えていきます。